ハイアーチってなんでしょう?


バイオリンの作りと音の関係を説明するときによく使われる言葉が「ハイアーチ」です。隆起が高い楽器のことを表しているのですが、一言にハイアーチといってもその形状は様々です。

トノーニのアーチ

カルロ・トノーニのバイオリン、表板のアーチ
カルロ・トノーニ

バイオリンを実際に作ってみればよくわかることなのですが、隆起の高さが決まったからといって自動的にアーチのデザインが決まるわけではありません。

例えば上の画像にあるカルロ・トノーニ(Carlo Tononi)。彼の作品のアーチにはヴェネチアのメーカーが好んで採用していたシュタイナー・タイプのものと、どちらかといえばストラディヴァリに近いもう少しフラットなものがあります。上のものはシュタイナー・タイプのものです。

パフリング周辺の隆起の堀が深いのと、センターに向けて盛り上がる隆起がどこか箱のような作りをしているのがわかるますか?


ルジェリのアーチ

もちろん、同様に堀が深いハイアーチでも製作者によってはおもむきがガラリと変わります。下の画像は17世紀クレモナの製作者フランチェスコ・ルジェリ(Francesco Ruggieri)の作品です。

フランチェスコ・ルジェリのバイオリン、表板のアーチ
フランチェスコ・ルジェリ

トノーニとは違い堀は深くとも隆起がスッキリしているのがわかりますか?

アーチの高さ、堀の深さにかかわらず無駄な贅肉のついていないのが、オールド・クレモナのアーチの特徴です。


ガダニーニのアーチ

がダニー二、バイオリンボディ
G.B.ガダニーニ

次はGB・ガダニーニ(Giovanni Battista Guadagnini)のヴァイオリンです。堀が強調されており、どちらかといえばトノーニに近いタイプになっています。

G.B.ガダニーニ、バイオリンの表板左下のふくらみ
G.B.ガダニーニ
ガダニーニ、バイオリン表板右上のふくらみ
G.B.ガダニーニ

ガダニーニでも別タイプのアーチ

ガダニーニ2つめのバイオリン、ボディのアーチ
G.B.ガダニーニ

同じくガダニーニの作品。同じ製作者のハイアーチでも作りが少し異なっているのがわかりますか?

ガダニーニ2つめ、バイオリン表板左下のふくらみ
G.B.ガダニーニ

このガダニーニは堀が浅く、丸みを抑えた作りになっていますね。

がダニー二2つめのバイオリンの表板、指板下につきそうな膨らみ
G.B.ガダニーニ

輪郭のエッジからほとんど下に窪まず、パフリングのあたりから急激に上昇するアーチになっています。あまりにも急すぎて、指板の下に当たりそうですね。


ハイアーチと音色

一般的なイメージでは、ハイアーチの楽器は甘美な音色をもっているけれども音量が足りないことになっています。しかし、ここに紹介している楽器はすべてコンサートホールでソロを弾くにも充分なパワーを備えたものでした。

バイオリンという楽器はその作りと音色の関係を一言で表せてしまえるような単純なものではないのです。アーチが高いから、低いから、板の厚みが薄いから、ニスが秘密のオイルニスだから、超古い木材を使っているから、等々、数ある要素の一つをとり「〇〇だからこういう音なんだ」と考えてしまうのはとても危険なことです。

演奏者にとっても、そしてもちろん私達職人にとっても。

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