ガダニーニ


Stradivari Viola Copy
比較的状態の良いストラディヴァリの渦巻きを見ると、輪郭の角を落とす面取りと呼ばれる加工のしてある部分が、黒く塗られているのがわかります。 これはアントニオ・ストラディヴァリが1690年頃に始めたもので、それ以前の作品には見られない特徴です。輪郭を強調させようとしたのでしょうか。ちょうど面取りそのものの幅が広くなるのと同時期です。 上にあるのが1690年以前の黒塗りがされていない渦巻きで、下が1690年以降の黒塗りがされている渦巻きになります。彫り方を比べてみてもその作風がかわっているのがわかりますね。

ストラディヴァリのスクロールその2


ヴァイオリンの作りと音の関係を説明するときによく使われる言葉が「ハイアーチ」です。隆起が高い楽器のことを表しているのですが、一言にハイアーチといってもその形状は様々です。 ヴァイオリンを実際に作ってみればよくわかることなのですが、隆起の高さが決まったからといって自動的にアーチのデザインが決まるわけではありません。例えば上の画像にあるカルロ・トノーニ(Carlo Tononi)。彼の作品のアーチにはヴェネチアのメーカーが好んで採用していたシュタイナー・タイプのものと、どちらかといえばストラディヴァリに近いもう少しフラットなものがあります。上のものはシュタイナー・タイプのものです。パフリング周辺の隆起の堀が深いのと、センターに向けて盛り上がる隆起がどこか箱のような作りをしているのがわかるますか?  もちろん、同様に堀が深いハイアーチでも製作者によってはおもむきがガラリと変わります。画像にあるのは17世紀クレモナの製作者フランチェスコ・ルジェリ(Francesco Ruggieri)の作品です。トノーニとは違い堀は深くとも隆起がスッキリしているのがわかりますね。アーチの高さ、堀の深さにかかわらず無駄な贅肉のついていないのが、オールド・クレモナのアーチの特徴です。  次はGB・ガダニーニ(Giovanni Battista Guadagnini)のヴァイオリンです。堀が強調されており、どちらかといえばトノーニに近いタイプになっています。 同じくガダニーニの作品。同じ製作者のハイアーチでも作りが少し異なっているのがわかりますか?このガダニーニは堀が浅く、丸みを抑えた作りになっていますね。一般的なイメージでは、ハイアーチの楽器は甘美な音色をもっているけれども音量が足りないことになっています。しかし、ここに紹介している楽器はすべてコンサートホールでソロを弾くにも充分なパワーを備えたものでした。ヴァイオリンという楽器はその作りと音色の関係を一言で表せてしまえるような単純なものではないのです。アーチが高いから、低いから、板の厚みが薄いから、ニスが秘密のニスだから、超古い木材を使っているから、等々、数ある要素の一つをとり「〇〇だからこういう音なんだ」と考えてしまうのはとても危険なことです。演奏者にとっても、そしてもちろん私達職人にとっても。

ハイアーチ